『総務なのに、パソコンやネットワークまで担当するの?』と思う方もいるかもしれません。ですが、専任の情報システム担当者がいない会社では、総務が情シス業務を兼任することは珍しくありません。

私も、もともとは総務として働いていました。最初からPCやネットワークに詳しかったわけではありません。それでも、社員からの相談やシステム導入を一つずつ対応するうちに、PC、Microsoft 365、ネットワーク、サーバー、VPN、セキュリティ、Webサイトまで担当範囲が広がっていきました。

たとえば、社員から「PCが急に映らなくなった!」と連絡を受けたことがあります。ノートPCの画面は正常、外部モニターだけ暗い、モニターの電源は入っている。そこまで確認できれば、PC全体の故障ではなく、外部出力や接続側へ疑う場所を絞れます。実際の原因は、PC側のHDMIケーブルが少し抜けていたことでした。

こうした小さなトラブルを一つずつ切り分けて解決する経験が、総務兼任の情シス力を少しずつ育ててくれたと感じています。

この記事では、総務と情シスを兼任すると何が起きるのかを、実務経験をもとに整理します。

総務が情シスを兼任する理由

中小企業では、人事、法務、広報、情報システムなどをすべて専任化できるとは限りません。『これ、誰がやるの?』となった仕事が総務へ集まり、その中にIT業務も含まれることがあります。

PC購入、メール設定、プリンター、Wi-Fiといった身近な相談から始まり、少しずつ担当範囲が広がるケースが多いです。

実際に担当してきた情シス業務

  • PC・スマートフォンの購入、初期設定、入れ替え
  • Microsoft 365の管理
  • メールアカウントの発行
  • ネットワーク・Wi-Fi対応
  • サーバー管理・入れ替え
  • クラウドサービスの導入
  • 複合機・プリンター対応
  • ソフトウェアライセンス管理
  • IT資産台帳
  • ベンダーとの調整
  • VPN
  • 情報セキュリティ
  • ホームページ改修

並べると広く見えますが、最初から全部できたわけではありません。相談を受けて調べる、分からなければ業者へ聞く、次に同じことが起きたら自分で対応する。その繰り返しで対応範囲が増えていきました。

総務と情シスを兼任するメリット

社員の困りごとを把握しやすい

総務は普段から社員と接する機会が多いため、ITトラブルも『現場で何が止まっているのか』という視点で見やすいです。単にシステムを導入するのではなく、実際に社員が使えるかまで考えられます。

入退社とアカウント管理を連動できる

採用や入退社手続きを総務が担当している場合、PC、メール、Microsoft 365、業務システムの権限を一連の流れで管理できます。これは兼任の大きな強みです。

退職時も同じです。PCやスマートフォンを回収し、端末のパスワードやロック解除情報が貸与時から変わっていないか確認する。さらに、管理台帳だけで終わらせず、在宅用PCや古い貸与端末などが自宅に残っていないか本人へ直接確認します。実際に、私が入社する前から借りていたPCが退職時に初めて分かったこともありました。

メールは所属長へ確認して、後任へ転送するのか停止するのかを決めます。月額費用が発生する不要ライセンスは整理しますが、Microsoft 365などはメールやクラウド上のデータ引き継ぎを確認してから回収します。また、メールだけではなく会社携帯の電話転送も確認します。過去にメール転送は済ませたものの電話転送を忘れ、退職者のスマートフォンの電源を切ったままにしてクレームになった経験があるからです。

このように、人事上の退職処理とIT上の退職処理を同じ流れで見られるのは、総務兼任ならではの強みだと感じています。

私の場合、新入社員が決まったら、まずPC在庫と必要スペックを確認し、次にメール用ライセンスの空きを確認します。追加発行が必要ならベンダーへ依頼し、その待ち時間にChrome、Office、プリンタードライバー、セキュリティ、サーバー接続、業務ソフトなどのキッティングを進めます。メールアドレスが取れたら名刺発行までつなげます。

こうして入社手続きとIT準備を別々の仕事にせず、並行して動かせるのは、総務と情シスを兼任しているからこその強みだと感じています。

業者との窓口を一本化しやすい

総務は契約、予算、社内調整に関わることが多いため、ITベンダーとの窓口も担いやすい立場です。システム導入を『機能』だけでなく『会社全体の運用』として考えやすくなります。

一番つらいのは、仕事が中断されること

情シスを兼任すると、予定していた総務業務の途中で『ネットにつながらない』『メールが送れない』『プリンターが止まった』と呼ばれます。

障害対応は後回しにしにくく、複数社員の仕事が止まっている場合は優先度も高くなります。その結果、自分の予定どおりに仕事が進まない日もあります。

一次対応の考え方は、総務がPCトラブル対応で最初に確認する7項目にまとめています。

全部を自分で直す必要はない

兼任情シスに必要なのは、何でも自力で解決する能力ではありません。自分で対応してよい範囲と、専門業者へ任せる範囲を判断する力です。

総務の桜場さん
総務の桜場さん
「情シスも兼任してるなら全部直せるよね?」ではないんです!大事なのは、自分で触っていい範囲と、専門家に任せる範囲を切り分けることだと思っています。

たとえば、サーバー移行、ネットワーク全体へ影響する作業、セキュリティ事故対応などは、失敗した場合の影響が大きいため、外部の専門家へ任せる方が合理的なことがあります。

一人情シスで怖いのは属人化

担当者が1人だと、設定や契約、管理者アカウント、バックアップ先などが本人しか分からない状態になりがちです。

最低限、次の情報は会社として残しておきたいです。

  • IT資産台帳
  • 利用システム・ライセンス一覧
  • 管理者権限の管理方法
  • ネットワーク構成の概要
  • バックアップ先・頻度・復元方法
  • ベンダーと保守契約
  • 入退社時のIT手順
  • 障害時の連絡先

具体的な管理項目は、PC・アカウント・バックアップ管理|一人情シスの最低ラインで整理しています。

セキュリティは『厳しくすればいい』ではない

情報セキュリティは重要ですが、設定を厳しくしすぎて通常業務まで止めてしまえば運用できません。安全性、使いやすさ、社員教育、バックアップを組み合わせて考える必要があります。

中小企業向けの基本的な考え方は、IPAの公式ガイドラインが参考になります。

情シス経験は総務の市場価値を広げる

総務に加えて、PC管理、Microsoft 365、ネットワーク、システム導入、ベンダー調整まで経験していると、転職時にも説明できる業務範囲が広がります。

ただし、『情シスもやっていました』だけでは伝わりません。管理した端末数、導入したシステム、削減した工数やコスト、対応した障害など、具体的に説明できるよう記録しておくことが大切です。

最初に学ぶならPCとネットワークの基礎

これから情シス業務を兼任する総務に、最初から高度な資格は必要ありません。まずはWindows、PC、ネットワーク、Microsoft 365の基礎からで十分です。

順番に学びたい方は、総務のためのPC・IT・情シスガイドを入口にしてください。

まとめ

総務と情シスの兼任は、仕事の幅も責任も大きくなります。一方で、社員の困りごとを直接解決し、システムを使って会社全体を改善できる、やりがいのある役割でもあります。

大切なのは、何でも一人で抱え込まないことです。自分で対応する範囲、外部へ任せる範囲、会社として残す情報を整理し、担当者1人に依存しない仕組みにしていくことが、兼任情シスを続けるうえで最も重要だと感じています。