総務と情シスを兼任するとどうなる?一人情シスの仕事内容・メリット・限界を実体験で解説
「総務なのに、パソコンやネットワークまで担当するの?」
そう思う方もいるかもしれません。
しかし、専任の情報システム担当者がいない会社では、総務が情シス業務を兼任することがあります。
私も、もともとは総務として働いていました。
ところが、社内に専任担当者がおらず、パソコンに詳しい人もいなかったため、少しずつ情シス業務を担当するようになりました。
これまでに担当したのは、パソコンの初期設定やメールアカウントの発行だけではありません。
Microsoft 365の管理。
ネットワークやWi-Fiの対応。
サーバーの入れ替え。
VPNの構築。
システム導入。
Pマークの取得。
ホームページの改修。
気が付けば、総務という枠を大きく超える仕事を担当していました。
総務の業務範囲そのものについては、以下の記事で詳しく紹介しています。
総務の仕事内容とは?10年以上働いてわかった「本当の仕事」を現役総務が解説
この記事では、総務と情シスを兼任してきた実体験から、仕事内容、メリット、つらいところ、兼任の限界について解説します。
総務が情シスを兼任することになった理由
私が情シス業務を担当するようになった理由は、とても単純です。
社内に専任担当者がいなかった。
そして、パソコンに詳しい人もいなかった。
それだけです。
中小企業では、すべての業務に専任担当者を置けるとは限りません。
人事部。
法務部。
広報部。
情報システム部。
大企業では部署が分かれている仕事でも、中小企業では総務に集まることがあります。
「これ、誰がやるの?」
となった仕事を、総務が引き受ける。
情シス業務も、その一つでした。
私は最初からパソコンが得意だったわけではありません。
むしろ、全くできませんでした。
学生の頃、オンラインゲームをインターネットからダウンロードしたものの、ファイルを解凍することができず、パソコンを壊しかけたことがあります。
当時は、
「パソコンなんて、頭のいい人でなければ使えない」
と思っていたくらいです。
そんな私でも、必要に迫られて調べ、失敗しながら繰り返すことで、少しずつ仕事として対応できるようになりました。
総務兼任の情シスが担当する仕事内容
私がこれまで担当してきた情シス関連の仕事は、次のとおりです。
- PC・スマートフォンの購入、初期設定、入れ替え
- Microsoft 365の管理
- メールアカウントの発行
- ネットワーク・Wi-Fiの対応
- サーバーの管理・入れ替え
- クラウドとのデータ同期
- 複合機・プリンターの対応
- ソフトウェアライセンスの管理
- 社員からの問い合わせ対応
- ウイルス・セキュリティ対策
- システムの導入
- システム用サーバーの構築
- IT資産台帳の管理
- ベンダーとの調整
- Pマークの取得
- VPNの構築
- ホームページの改修
こうして並べてみると、かなり広いですよね。
ただし、最初からすべてを担当していたわけではありません。
社員から、
「パソコンが動かない」
「メールが送れない」
と相談される。
原因を調べる。
直せなければ業者に聞く。
次に同じことが起きたときには、自分で対応できるようになる。
その積み重ねでした。
社員から寄せられる相談は本当に幅広い
情シスを兼任していると、日々さまざまな相談が届きます。
よくあるのは、次のような内容です。
- パソコンが動かない
- メールを送受信できない
- パスワードを忘れた
- プリンターにつながらない
- ファイルが消えた
- Excelの使い方が分からない
- インターネットにつながらない
- パソコンが古いから交換してほしい
- 充電器をなくした
相談する社員にとっては、どれも今すぐ解決してほしい問題です。
パソコンが動かなければ、仕事が止まります。
メールが使えなければ、取引先へ連絡できません。
プリンターが使えなければ、必要な書類を出力できません。
一件ずつ見れば小さなトラブルでも、会社全体では大きな損失になることがあります。
そのため、総務の通常業務を進めている途中でも、問い合わせ対応を優先しなければならないことがあります。
総務と情シスを兼任するメリット
総務と情シスの兼任には、大変なことだけでなくメリットもあります。
社員の困りごとを把握しやすい
総務は、日頃から社員と接する機会の多い部署です。
労務。
備品。
設備。
社内制度。
職場環境。
さまざまな相談が総務に届きます。
そこへITの相談も加わることで、社員が普段どのようなことで困っているのかを、より深く把握できます。
システムを導入するときも、機能だけで判断するのではなく、
「実際に社員が使えるか」
「現場の負担は減るか」
という視点で考えられます。
入退社とアカウント管理を連動できる
社員を採用すると、働き始める日までに準備が必要です。
パソコン。
スマートフォン。
メールアドレス。
Microsoft 365のアカウント。
業務システムの権限。
総務が採用や入社手続きも担当していれば、入社情報を把握した段階で準備を始められます。
退職時も同様です。
アカウントを停止する。
パソコンを回収する。
必要なデータを関係部署へ確認する。
権限を削除する。
人事情報とIT管理を連動できるのは、兼任する大きなメリットです。
業者との窓口を一本化できる
IT関連の業者とのやり取りには、社内調整が欠かせません。
予算はいくらか。
誰が使うのか。
何を改善したいのか。
いつ導入するのか。
総務は、予算や契約、社員への周知を担当することが多いため、業者との窓口を一本化しやすい立場です。
単にシステムを導入するだけではなく、会社全体を見ながら進められます。
総務経験がシステム導入に活きる
私はこれまで、次のようなシステムやサービスの導入・運用に関わってきました。
- Microsoft 365
- kintone
- 勤怠管理システム
- 原価管理システム
- ファイルサーバー
- セキュリティソフト
- ANDPAD
- Jooto
- Microsoft Planner
システム導入で重要なのは、機能が多いことではありません。
現場の課題を解決できることです。
総務として普段から社員の相談を聞いていると、
「どこで時間がかかっているのか」
「どんなミスが起きているのか」
「どの作業を面倒だと感じているのか」
が見えてきます。
その情報をもとにシステムを選び、場合によっては自分で簡単な仕組みを構築します。
その結果、
- 作業時間を削減する
- 紙を減らす
- ミスを減らす
- 問い合わせを減らす
- 管理方法を統一する
- コストを削減する
といった改善につなげられます。
情シスの知識だけでなく、現場を知っていることが、システム導入では大きな強みになります。
総務と情シスの兼任は仕事が中断されやすい
兼任の大きなデメリットは、自分の予定どおりに仕事が進まないことです。
総務の仕事をしている途中で、
「インターネットにつながりません」
と連絡が来る。
採用の準備をしている途中で、
「メールが送れません」
と相談される。
月末の処理をしているときに、
「プリンターが動きません」
と呼ばれる。
このようなことが重なると、PC関連の相談と対応だけで一日が終わることもあります。
障害対応は、通常業務と違って後回しにしにくい仕事です。
ネットワークが不安定になれば、複数の社員の仕事が止まります。
その結果、原因が自分にあるわけではなくても、
「ネットワークが遅い」
「パソコンが使えない」
と総務へ不満が集まりやすくなります。
総務と情シスの兼任は、責任範囲が広く、業務量が見えにくい仕事でもあります。
ウイルス対策は厳しくすればよいわけではない
特に印象に残っているのが、世間でEmotetと呼ばれるウイルスメールが広がった時期です。
社内でも、不審なメールと思われるものが散見されました。
幸い実際の被害はありませんでしたが、社員への注意喚起には苦労しました。
不審な添付ファイルを開かない。
本文中のリンクを安易にクリックしない。
知っている人から届いたように見えても油断しない。
こうした内容を繰り返し周知しました。
一方で、セキュリティを厳しくすれば、すべて解決するわけではありません。
メールサーバーのフィルターを強化したところ、通常の一斉メールまで迷惑メールとして判定され、重要なメールが届かなかったことがあります。
安全性を高める。
しかし、業務を止めない。
このバランスを考える必要があります。
セキュリティは、設定を強くして終わりではありません。
社員教育、運用ルール、システム設定を組み合わせて考える必要があります。
すべてを自分で対応する必要はない
私は基本的に、社内で対応できることは自分で対応します。
ただし、何でも自分で行うわけではありません。
作業時間。
失敗した場合の影響。
必要な専門知識。
これらを考えて、外部業者へ依頼することもあります。
たとえば、
- サーバーの構築
- 旧サーバーから新サーバーへのデータ移行
- 事業に大きな影響を与えるネットワーク作業
などは、専門業者へ任せることがあります。
自分で対応した方が安く見えても、失敗によって社員全員の仕事が止まれば、結果的に高くつきます。
兼任情シスに必要なのは、すべて自分で直す能力ではありません。
自分で対応する範囲と、専門家に任せる範囲を判断する力です。
一人情シスで最も怖いのは属人化
一人で情シス業務を担当していると、設定や手順が本人しか分からない状態になりやすくなります。
特にブラックボックス化しやすいのが、
- サーバーのバックアップ先
- バックアップの保存世代
- システム構築時の設計
- 管理者アカウント
- ネットワーク構成
- ベンダーとの契約内容
などです。
担当者が休んだら分からない。
退職したら誰も設定を変更できない。
障害が起きても、どこを確認すればよいか分からない。
この状態は、会社にとって大きなリスクです。
そのため、少なくとも次の情報は残しておく必要があります。
- IT資産台帳
- 管理しているシステムの一覧
- 契約内容と更新時期
- ベンダーの連絡先
- バックアップの保存先
- 管理者権限の管理方法
- 入退社時の対応手順
- 障害発生時の連絡先
一人で担当していても、仕事を一人だけのものにしてはいけません。
最低限守りたいセキュリティ
総務が情シスを兼任する場合、特に意識したいのは次の3点です。
退職者の権限を速やかに停止する
退職後もメールや社内システムへアクセスできる状態は避けなければなりません。
退職日、最終出勤日、引き継ぎ状況を確認し、関係部署と連携して権限を停止します。
管理者権限を安易に付与しない
管理者権限があれば、さまざまな設定を変更できます。
便利だからという理由で、必要以上に多くの社員へ付与すると、誤操作や不正利用のリスクが高まります。
業務上必要な範囲に限定することが重要です。
バックアップを取る
どれだけ対策をしても、障害や操作ミスを完全に防ぐことはできません。
そのため、問題が起きないようにするだけでなく、問題が起きたあとに戻せる状態をつくっておく必要があります。
バックアップは、作成して終わりではありません。
保存先。
保存頻度。
保存世代。
復元方法。
ここまで確認して、初めて意味があります。
一人情シスは何人規模まで対応できるのか
これは会社の状況によって大きく変わります。
私の経験では、社員数50名程度までであれば、総務と兼任しながら一人で対応できる可能性があります。
ただし、50名なら必ず一人で回せるという意味ではありません。
拠点が複数ある。
工場や店舗がある。
使用するシステムが多い。
ネットワーク障害で事業全体が止まる。
個人情報や機密情報を大量に扱う。
このような会社では、人数が少なくても一人での対応は難しくなります。
社員数が50名を超える場合や、複数拠点がある場合は、少なくとも補助できる担当者を一人置いた方が安全だと考えています。
大切なのは、社員数だけで決めることではありません。
障害が発生したときの事業への影響と、担当者が抱えている業務量を見て判断する必要があります。
最初に学ぶならPCとネットワークの基礎
これから情シス業務を担当する総務に、最初から難しい資格は必要ありません。
まず学ぶべきなのは、
- WindowsとPCの基本
- ネットワークの基礎
です。
パソコンがどのような部品で構成されているのか。
IPアドレスとは何か。
社内ネットワークとインターネットはどうつながっているのか。
Wi-Fiと有線LANは何が違うのか。
こうした基礎を知るだけでも、トラブルが起きたときに調べやすくなります。
資格よりも重要なのは、経験と調べる力です。
やってみる。
うまくいかなければ調べる。
業者へ聞く。
直った理由を記録する。
この繰り返しで、少しずつ対応できる範囲が広がります。
総務に役立つ資格と、資格以上に重要な能力については、以下の記事で詳しく紹介しています。
総務に資格は必要?総務歴10年以上が実務・転職で役立つ資格を本音で解説
情シス経験は転職で評価されるのか
採用担当として見ると、総務に加えて情シス経験がある応募者は評価材料になります。
ただし、
「情シスを担当していました」
だけでは、どこまで経験しているのか分かりません。
会社によって、情シスの守備範囲は大きく異なります。
パソコンの初期設定が中心だった人。
社員からの問い合わせに対応していた人。
ネットワークやサーバーまで担当していた人。
システムの選定や導入を行っていた人。
同じ「情シス経験」でも、内容は違います。
職務経歴書では、次のように具体的に書いた方が伝わります。
- 管理したPCやスマートフォンのおおよその台数
- 管理したアカウントやライセンス
- 導入したシステム
- 対応したトラブル
- 業務改善やコスト削減の実績
- ベンダーとの調整経験
- セキュリティ対策
- 手順書や台帳の整備
採用時に確認したいのは、経験があるかどうかだけではありません。
その会社の環境や働き方に適応できるかどうかです。
総務に向いている人の特徴については、以下の記事でも詳しく解説しています。
総務に向いている人・向いていない人の特徴|総務歴10年以上が実体験から解説
業務範囲に見合う評価はされるのか
総務と情シスを兼任すると、仕事の幅も責任も大きくなります。
その経験が給与や役職へ反映されるかどうかは、会社の評価制度によります。
実力や成果を評価する風土がある会社なら、加点される可能性があります。
一方で、
「パソコンに詳しいからやっているだけ」
「総務の仕事の一部」
と捉えられる会社では、負担に見合う評価を受けにくいこともあります。
担当者側も、自分が何を改善したのかを記録しておく必要があります。
問い合わせ件数を減らした。
ライセンス費用を削減した。
作業時間を短縮した。
紙の使用量を減らした。
システムを導入してミスを減らした。
こうした成果を可視化できれば、経営陣へ仕事の価値を説明しやすくなります。
経営者に理解してほしいこと
総務に情シス業務を任せること自体が、必ずしも悪いわけではありません。
総務だからこそ、現場の事情を理解しながらシステムを管理できるメリットがあります。
ただし、兼任には限界があります。
セキュリティやバックアップには、一定の費用をかける必要があります。
直接売上を生み出さないからといって、後回しにはできません。
一度大きな障害が起きれば、社員全員の仕事が止まる可能性があります。
また、担当者一人にすべてを依存する状態も危険です。
会社と担当者は定期的に意見交換を行い、
- 業務量は適正か
- 外部へ依頼すべき仕事はないか
- 補助できる社員は必要ないか
- セキュリティ上の課題はないか
- 必要な予算を確保できているか
を確認する必要があります。
まとめ
総務と情シスの兼任は、やりがいの大きな仕事です。
社員の困りごとを直接解決できる。
システムを使って業務を改善できる。
会社全体の仕組みを知ることができる。
総務だけを担当していたときよりも、見える範囲は確実に広がります。
一方で、責任と守備範囲も大きく増えます。
総務業務と障害対応が重なる。
問い合わせで仕事が中断される。
専門外の問題にも対応を求められる。
一人しか分からない仕事が増える。
こうしたリスクもあります。
総務と情シスの兼任は、やりがいは大きいものの、責任や守備範囲も大きく増える仕事です。
ただし、自分自身の成長には大きくつながります。
だからこそ、会社と担当者は定期的に意見交換を行い、どこまで社内で対応し、どこから外部へ任せるのかを整理する必要があります。
一人で抱え込むのではなく、会社全体でIT環境を守る。
それが、総務と情シスの兼任を続けるうえで最も重要なことだと思います。



