専任の情シスがいない会社では、PC、アカウント、バックアップ、ライセンス、ベンダー情報などが総務に集まることがあります。仕事が回っているうちは問題が見えにくいのですが、担当者が休んだり退職したりしたときに、属人化が一気に表面化します。

一人情シスで最も大切なのは、全部を自分で抱えることではなく、誰が見ても最低限の状態が分かるように管理することです。

1. PC・スマートフォンの資産台帳を作る

まず、誰が何を使っているかを一覧にします。

  • 管理番号
  • 利用者
  • メーカー・型番
  • シリアル番号
  • 購入日・リース期限
  • OS
  • 保証・保守情報

端末交換の判断や退職時の回収確認がしやすくなります。

2. アカウントは入社・異動・退職で管理する

アカウント管理は作成したら終わりではありません。入社で作成し、異動で権限を見直し、退職で停止・削除するところまでが一連の流れです。

退職時は端末・メール・ライセンスを別々に確認する

退職者からPCやスマートフォンを回収するときは、私の職場ではまず、貸与時から端末のパスワードやロック解除情報が変更されていないかを確認します。変更内容が分からないまま返却されると、初期化や再利用の手続きで困ることがあるためです。端末管理の方法は会社やMDMの有無で異なるので、自社の運用に合わせて確認項目を決めておくことが大切です。

もう一つ、台帳だけを見て終わらせないようにしています。『在宅用のPCやスマートフォンなど、会社から借りているものは他にありませんか?』と本人へ直接確認します。管理台帳を作っていても、緊急貸与や記入漏れがゼロとは限らないからです。

実際に、私が入社する前から在宅用として借りていたPCが、退職時の確認で初めて分かったケースがありました。古いPCを自宅に保管したままになっていることもあります。台帳との照合+本人への聞き取りをセットにした方が、貸与品の回収漏れを防ぎやすいと感じています。

メールは、すぐに完全停止するとは限りません。私は所属長へ確認し、後任者や別の担当者へ受信メールを転送する必要があるか、それとも停止してよいかを決めます。後任がいる場合は、必要に応じて転送や引き継ぎの設定を行います。

ここで忘れやすいのが、会社携帯の電話転送です。過去に、メールの転送設定は済ませたのに、退職者のスマートフォンの電話転送を設定し忘れたことがあります。端末の電源を切ったままにしてしまい、外部からの電話がつながらず、結果的にクレームになりました。それ以来、退職時はメールだけでなく、会社携帯の着信を誰が受けるのかまで確認するようにしています。

総務の桜場さん
総務の桜場さん
メール転送だけ終わって安心していたら、電話転送を忘れてクレームになったことがあります。退職対応は「連絡先」まで全部見るようになりました!

ライセンスは、退職後に不要となるものを整理します。特に月額費用が発生するサービスは早めに見直します。一方で、Microsoft 365などはライセンスを外すことでメールやクラウド上のデータへアクセスできなくなる場合があります。私は、必要な引き継ぎや保存を確認したうえで、一定期間を置いてから削除・回収するようにしています。

特に管理者権限は必要最小限にし、『便利だから』という理由だけで広く付与しない方が安全です。

3. ライセンス一覧を持つ

Microsoft 365やAdobeなど、ユーザー単位で費用が発生するサービスは、誰に何を付与しているかを一覧化します。入社予定者が決まったら、私はPC在庫と同時に空きライセンスも確認します。足りなければベンダーやリセラーへ追加発行を依頼し、その待ち時間にPCキッティングを進めます。

ライセンス管理はコスト管理でもあります。退職者のライセンスを回収できれば不要コストを減らせますし、入社直前に『メールアドレスが作れない』という事態も防ぎやすくなります。

4. バックアップと同期を混同しない

クラウドに同期されているから安心、とは限りません。誤削除やランサムウェア、設定ミスなどに備えるには、どこへ、どの頻度で、何世代保存しているかを確認する必要があります。

さらに重要なのが、実際に復元できるかです。バックアップが存在していても、戻せなければ意味がありません。

5. 管理者アカウントを属人化させない

サーバー、Microsoft 365、ネットワーク機器、Webサービスなどの管理者情報が1人しか分からない状態は危険です。パスワードそのものを誰でも見られる形で共有するのではなく、会社として安全に保管・引き継げる方法を決めます。

6. ベンダー情報を残す

  • 会社名
  • 担当者
  • 連絡先
  • 契約内容
  • 保守時間
  • 契約更新時期
  • 障害時の窓口

障害が起きてから『どこへ電話すればいいか分からない』状態を防ぎます。

7. 最低限の障害対応フローを決める

PC1台のトラブルと、会社全体のネットワーク停止では優先度が違います。誰へ報告し、どのベンダーへ連絡し、社員へどう周知するかを決めておくと、緊急時に動きやすくなります。

公式情報で管理の基準を確認する

IPAのガイドラインには、資産管理や情報セキュリティの考え方を整理するための資料もあります。中小企業や一人情シスでは、メーカー情報だけでなく公的機関のガイドも参考になります。

最低限これだけ残せば引き継げる

  • IT資産台帳
  • 利用サービス・ライセンス一覧
  • 管理者権限の管理方法
  • 入退社時のITチェックリスト
  • バックアップの保存先・頻度・復元方法
  • ネットワーク構成の概要
  • ベンダー・保守連絡先

まとめ

一人情シスの最低ラインは、専門家のようにすべての障害を直せることではありません。PC、アカウント、権限、バックアップ、ベンダー情報を整理し、担当者が変わっても会社のIT環境を維持できる状態にすることです。

入社時の具体的な準備は新入社員のPCキッティング手順、Microsoft 365はMicrosoft 365・Outlook・Teamsの基本もあわせてご覧ください。