総務の業務改善は何から始める?中小企業・一人総務で実践した進め方と成功・失敗例
「総務の業務改善をしたいけれど、何から始めればいいのかわからない」
「一人総務で手が回らない。システムを入れれば楽になるのだろうか」
中小企業の総務では、少人数で幅広い仕事を抱えながら、日々の問い合わせや突発対応にも追われがちです。
私は総務・情シス・採用などバックオフィスの仕事に10年以上携わり、Excelで管理していた売上・原価集計のシステム化、kintoneを使った管理方法の統一、業務の標準化などに取り組んできました。
一方で、便利な仕組みを作ったのに現場へ定着せず、運用が止まった経験もあります。
その経験から言えるのは、総務の業務改善は「新しいシステムを選ぶこと」から始めないほうがいいということです。
この記事では、中小企業や一人総務でも進めやすい業務改善の手順と、実際の成功・失敗例を紹介します。
結論|総務の業務改善は「今の仕事を見える化する」ところから始める
業務改善で最初にやるべきことは、システムの比較ではありません。
まず確認したいのは、次のような仕事です。
- 同じ情報を何度も入力している
- 特定の人しか手順を知らない
- 紙・Excel・メールを行き来している
- 毎月同じ集計を繰り返している
- 社員から同じ質問を何度も受ける
- 長い時間をかけているのに、ほとんど使われない資料がある
こうした「時間がかかる・ミスが出る・属人化している」仕事を洗い出すと、改善すべき場所が見えてきます。
総務の業務全体を先に把握したい方は、総務の仕事内容とは?10年以上働いてわかった本当の仕事も参考にしてください。
中小企業の総務は業務改善の効果が出やすい
中小企業では、総務の人数が少なく、1人が複数の仕事を兼任していることが珍しくありません。
備品管理、勤怠、採用、契約書、社内システム、車両、健康診断、行政対応などを少人数で担当している会社もあります。
そのため、1つの作業を30分短縮できるだけでも、年間では大きな差になります。
逆に、担当者しか分からない仕事を放置すると、その人が休んだり退職したりしたときに仕事が止まります。
「少人数だから業務改善できない」のではなく、少人数だからこそ改善効果が大きいと私は考えています。
一人総務でも進めやすい業務改善5ステップ
1. 時間がかかっている仕事を洗い出す
最初は、1週間や1か月の仕事をざっくり書き出します。
「何に何分かかったか」を完璧に測る必要はありません。
まずは、毎週・毎月繰り返している仕事、残業の原因になっている仕事、ミスが起きやすい仕事を見つけます。
2. 「なくす・減らす・まとめる」を先に考える
システム化の前に、その作業自体が本当に必要か考えます。
- その資料は今も誰かが見ているか
- 同じデータを別のファイルにも入力していないか
- 入力項目を減らせないか
- 複数の申請を1つにまとめられないか
不要な仕事を自動化しても、不要な仕事が速くなるだけです。
3. 実際に作業している人へ聞く
総務から見ると非効率でも、現場にはそのやり方を続けている理由がある場合があります。
「何が面倒か」「どこでミスが起きるか」「何を減らしたいか」を実際の担当者へ確認します。
一人総務の場合も、関連部署の管理職や利用者を早い段階で巻き込むことが重要です。
4. いきなり全社導入せず、小さく試す
新しい仕組みは、最初から全社へ広げないほうが安全です。
1部署、数人、1業務から試し、入力項目や操作方法を修正します。
小さく始めれば、失敗したときの影響も小さくできます。
5. 「使われたか」まで確認する
システムを公開した時点で、業務改善は終わりではありません。
本当に使われているか。入力が増えていないか。問い合わせが減ったか。作業時間が短くなったか。
導入後の確認まで行って、初めて改善の効果が分かります。
総務の業務効率化で見直しやすい仕事
すべてをシステム化する必要はありません。まずは定型的で繰り返しが多い仕事から見直します。
- 紙の申請書をフォーム化する
- Excelの書式を部署ごとにバラバラにしない
- 同じ内容の転記を減らす
- ファイルの保存場所を統一する
- よくある質問をFAQやマニュアルにする
- 定期的な集計やレポートを自動化する
- 締切前のリマインドを自動化する
総務の1日には突発対応も多くあります。実際の仕事の流れは、総務の1日の流れとは?仕事内容・繁忙期・突発対応で紹介しています。
小さな成功例|夏なのに上着を着ている社員から空調の問題に気づいた
業務改善というと、システム導入や大きなプロジェクトを想像しがちですが、日常の小さな違和感から始まる改善もあります。
ある夏、外は30度近いのに、社内で上着やカーディガンを着ている女性スタッフがいました。ひざ掛けを使っている社員もいて、私は「寒いですか?」と尋ねました。
返ってきたのは、「直接風が当たって寒いし、乾燥します」という声でした。
そこで、まずエアコンの風向きや温度を調整しました。ただ、単純に温度を上げれば別の社員が暑くなる可能性があります。そこで、風が一か所へ直接当たらないように、エアコンへ後付けする回転式のファンも取り付けました。
ファンは数千円程度で購入できました。大きな設備工事ではなく、その金額で社員の不快感を減らせるのであれば、費用に対して得られる効果は大きいと判断して購入しました。
導入後には実際に「寒くなくなった」「風が直接当たらなくなった」という声があり、夏場でも上着を羽織っていた社員も減りました。
この経験で改めて感じたのは、総務の改善は、社員の様子を観察し、本人に聞き、原因を確かめ、費用対効果を考えて小さく実行することからも始められるということです。
成功例|30億円以上の売上・原価集計を見直した
私が経験した中で効果が大きかったのは、売上と原価の集計方法の見直しです。
当時は30億円を超える売上と原価をExcel中心で集計していました。
問題は、特定の担当者に作業が集中していたことです。
- 担当者しか計算方法を把握していない
- 集計に時間がかかる
- 残業が増える
- 原価や利益の状況を早く確認できない
そこで、部署ごとに違っていた集計基準を整理し、売上・原価を同じ条件で確認できる仕組みに変更しました。
繰り返し行う計算はシステム側へ移し、誰が操作しても同じ数字が出るようにしました。
その結果、以前より早い段階で原価や利益を確認できるようになり、経営側も問題のある案件へ早く気付けるようになりました。
ここで大事なのは「Excelをやめたこと」ではありません。
人によって違っていた仕事のルールを整理し、同じやり方で処理できる状態にしたことが大きかったと思っています。
失敗例|営業案件管理システムは定着しなかった
逆に、うまくいかなかった業務改善もあります。
営業案件の進捗を一括管理するシステムを作ったことがありました。
誰がどの顧客を担当しているか、案件がどこまで進んでいるか、次に何をするのかを確認できる仕組みです。
機能としては動いていました。
しかし、社員に使ってもらえませんでした。
現場からは「入力する時間がもったいない」「忙しい」「自分で管理したい」という声が出ました。
管理職も十分に活用せず、結果的に運用が止まりました。
この経験で学んだのは、便利なシステムを作ることと、業務改善が成功することは別だということです。
業務改善が失敗しやすい3つのパターン
システム導入が目的になっている
「DXをやる」「kintoneを入れる」「AIを使う」こと自体が目的になると、現場の課題から離れてしまいます。
使う人を巻き込んでいない
管理者にとって便利でも、入力する社員の仕事が増えるだけなら定着しません。
最初から完璧を目指している
大きな仕組みを一度に作るほど、修正も難しくなります。まず小さく試し、使ってもらってから広げるほうが現実的です。
一人総務なら「止まると困る仕事」から改善する
一人総務では、すべてを同時に改善するのは現実的ではありません。
私は次の順番で優先すると考えます。
- 担当者が休むと止まる仕事
- 期限や法令があり、ミスの影響が大きい仕事
- 毎月繰り返して時間がかかる仕事
- 社員から同じ問い合わせが多い仕事
- できれば楽にしたい仕事
最初から「便利になる仕事」だけを見るより、会社にとって止まると困る仕事から手を付けたほうが効果が大きいです。
総務とITを兼任する場合の実務については、総務と情シスを兼任するとどうなる?一人情シスの仕事内容・メリット・限界も参考にしてください。
AI・RPAは業務を整理してから使う
AIやRPAは、定型的な入力、分類、照合、集計、レポート作成などと相性が良いです。
ただし、元の業務が整理されていないまま自動化すると、複雑な仕組みが増えるだけになることがあります。
まず業務を減らす。手順を統一する。そのあとで自動化する。
この順番のほうが、長く運用しやすい仕組みになります。
まとめ|総務の業務改善は小さく始める
総務の業務改善は、システム導入から始める必要はありません。
まず、今の仕事を見える化します。
- 何に時間がかかっているか
- どこで二重入力しているか
- 誰に仕事が集中しているか
- どこでミスや問い合わせが発生しているか
そのうえで、なくせる仕事をなくし、減らせる仕事を減らし、必要な部分だけを仕組み化します。
中小企業や一人総務では、一度に大きな改革をする必要はありません。
小さく始める。使ってもらう。意見を聞く。修正する。
この繰り返しが、結局いちばん定着しやすい業務改善だと考えています。
総務の仕事全体や今後のキャリアまで整理したい方は、総務の仕事を知る完全ガイドもあわせてご覧ください。


