社員の退職が決まると、人事手続きだけでなく、PC・スマートフォン・メール・各種アカウント・ライセンスなど、ITまわりの対応も一気に発生します。

専任の情シスがいない会社では、こうした退職時のIT対応を総務が担当することも少なくありません。私も総務と情シスを兼任する中で、何度も退職対応をしてきました。

その中で感じるのは、「PCを返してもらって、メールを止めれば終わり」ではないということです。管理台帳に載っていない在宅用PCが見つかったこともあれば、メール転送は済ませたのに電話転送を忘れ、クレームになったこともあります。

総務の桜場さん
総務の桜場さん
退職対応は「返却されたものを受け取る」だけでは足りません!会社から貸しているもの、残すデータ、引き継ぐ連絡先まで一つずつ確認しています。

この記事では、私が実際に行っている流れをもとに、退職者のPC・メール・アカウント対応で総務が確認したい項目を整理します。

退職時のIT対応は「貸与品・連絡先・データ・権限」で分ける

退職対応は、作業を4つに分けると整理しやすくなります。

  • 貸与品:PC、スマートフォン、周辺機器など
  • 連絡先:メール、会社携帯、電話転送
  • データ:メールボックス、OneDrive、共有フォルダ、業務ファイル
  • 権限・契約:Microsoft 365、各種クラウドサービス、業務システム、月額ライセンス

この4つを別々に確認すると、「PCは返ってきたけれど在宅用端末が残っていた」「メールは転送したけれど電話が止まっていた」といった漏れを防ぎやすくなります。

1. まず管理台帳と本人への聞き取りで貸与品を確認する

私は退職が決まったら、まずPCやスマートフォンの管理台帳を確認します。

ただし、台帳だけを信用して終わりにはしません。 緊急で貸し出したPCを記入し忘れていたり、かなり前に在宅勤務用として貸し出した端末が残っていたりすることがあるからです。

実際に、私が入社する前から本人が借りていたPCが、退職時の確認で初めて分かったことがありました。古いPCを自宅に保管したまま、本人も普段は意識していないケースがあります。

そのため私は、台帳との照合に加えて、本人へ直接こう確認します。

「在宅用PCやスマートフォンなど、会社から貸与されているものは他にありませんか?」

管理台帳は重要ですが、最後は本人への聞き取りまでセットにした方が回収漏れを防げます。

回収対象として確認したいもの

  • ノートPC・デスクトップPC
  • 会社スマートフォン・携帯電話
  • ACアダプター・充電器
  • マウス・キーボード・ドッキングステーション
  • モバイルWi-Fi・通信端末
  • セキュリティキー・ICカードなど会社独自の貸与品

会社によって貸与品は異なるので、自社の資産台帳と照らしてチェックリスト化しておくと楽です。

2. PC・スマホを回収する前にパスワードやロック情報を確認する

PCやスマートフォンを回収するときは、貸与時から端末のパスワードやロック解除情報が変更されていないかを確認します。

変更内容が分からないまま返却されると、初期化や再利用をするときに困ることがあります。会社でMDMや集中管理をしている場合は運用が異なりますが、少なくとも「返却後に会社側で初期化・再設定できる状態か」は退職前に確認しておきたいところです。

再利用を前提にするなら、回収時点で電源が入るか、必要な付属品がそろっているかも見ておくと後のキッティングが楽になります。

新入社員への再利用を含めた準備は、新入社員のPCキッティング手順でも整理しています。

3. メールは「止めるか・転送するか」を所属長へ確認する

退職者のメールアドレスを、退職日にいきなり完全停止してよいとは限りません。

取引先や顧客が、退職を知らずに元担当者へメールを送り続けることがあります。そのため私は所属長へ確認し、後任者へ転送する必要があるか、完全に停止してよいかを決めます。

後任がいる場合は、必要に応じて受信メールを後任へ転送します。引き継ぐメールやデータがある場合は、停止・削除の前に整理しておくことも大切です。

4. メールだけでなく会社携帯の「電話転送」を忘れない

これは私が実際に失敗したことです。

ある退職者の対応で、メールの転送設定はきちんと済ませていました。ところが、会社スマートフォンの電話転送を設定し忘れたまま、端末の電源を切ってしまいました。

その結果、外部から退職者へかかってきた電話がつながらず、クレームになりました。

総務の桜場さん
総務の桜場さん
メールを転送したので「これで大丈夫」と思っていたんです。でも、電話もお客様との連絡先ですよね。実際に失敗してから、メールと電話は必ずセットで確認するようになりました!

それ以来、退職時は次の点まで確認しています。

  • 退職者の会社携帯番号を今後も使うのか
  • 着信を後任者へ転送するのか
  • 取引先への担当変更案内は済んでいるか
  • 転送先の社員が実際に着信を受けられるか

退職時のIT対応は、PCとメールだけではなく「連絡先」全体を見ることが重要です。

5. Microsoft 365や業務アカウントは「停止」と「削除」を分けて考える

退職者のアカウントは、不正アクセスを防ぐために退職後のアクセスを止める必要があります。一方で、データの引き継ぎが終わる前に何でも削除すると、必要なメールやファイルまで確認できなくなる可能性があります。

私は、月額コストが発生する不要なサービスは優先して整理しますが、Microsoft 365のようにメールやクラウドデータと関係するものは、必要なデータの保存・引き継ぎを確認してからライセンスを外すようにしています。

Microsoft公式でも、退職者対応は「サインインの停止」「メールボックスの保存」「メール転送」「OneDriveやOutlookデータへのアクセス付与」「ライセンス削除」「アカウント削除」と段階を分けて案内されています。契約プランや保持ポリシーによって挙動が変わるため、自社環境を確認したうえで処理してください。

Microsoft Learn:元従業員を削除する際の手順

Microsoft 365の基本的な管理については、総務が覚えておきたいMicrosoft 365・Outlook・Teamsの基本も参考にしてください。

6. 月額ライセンスはコストの高いものから確認する

退職者が使っていたソフトやクラウドサービスには、月額費用が発生しているものがあります。

退職後も誰も使わないライセンスが残っていると、毎月少しずつ無駄なコストが発生します。そのため、退職時には「その人が使っていた有料サービス」を一覧で確認し、不要なものから解約・割り当て解除を進めます。

ただし、前述のとおりメールやクラウドデータと紐づくサービスは、コストだけを見て即削除しない方が安全です。

7. 共有フォルダ・業務データ・管理者権限を引き継ぐ

退職者のPCを初期化する前に、その人しか持っていない業務データがないか確認します。

特に注意したいのは、本人のPC内だけに保存された資料、個人OneDrive、共有フォルダの所有権、業務システムの管理者権限などです。

退職者がシステム管理者だった場合、アカウントを消した後に誰も設定変更できなくなることもあります。管理者権限は、削除前に後任者や会社管理アカウントへ移しておきます。

PC・アカウント・バックアップを普段からどう管理するかは、総務がやるPC・アカウント・バックアップ管理で詳しくまとめています。

退職時ITチェックリスト

実務では、次の順番で確認すると漏れを減らしやすくなります。

  • □ PC・スマートフォンなど貸与品を管理台帳で確認
  • □ 本人へ「他に会社から借りているものはないか」を確認
  • □ 在宅用・緊急貸与・古い端末が残っていないか確認
  • □ パスワード・ロック解除情報を確認
  • □ メールを停止するか、後任へ転送するか所属長へ確認
  • □ 会社携帯の電話転送先を確認
  • □ メール・OneDrive・業務データの引き継ぎを確認
  • □ 共有フォルダやシステムの権限を後任へ移行
  • □ Microsoft 365など各種アカウントのアクセスを停止
  • □ 月額ライセンスを整理
  • □ データ保持を確認してから不要アカウントを削除
  • □ PC・スマホを初期化し、再利用・廃棄へ回す

退職対応は「削除作業」ではなく「会社の仕事を止めないための引き継ぎ」

退職時のIT対応というと、アカウント削除やPC回収のような「後片付け」に見えるかもしれません。

ですが、実際には退職した人がいなくなった翌日も、会社の仕事を止めないための引き継ぎです。

取引先からのメールや電話を後任へつなぐ。必要なデータを残す。貸与品を回収する。不要なライセンスは止める。その一つひとつが、退職後のトラブル防止につながります。

私自身、電話転送を忘れてクレームになった経験があるからこそ、現在は「PC・メール・電話・データ・ライセンス」をセットで見るようにしています。

総務と情シスを兼任する仕事全体については、総務と情シスを兼任するとどうなる?もあわせてご覧ください。