「総務として働き続けた先に、どのようなキャリアがあるのだろう」

現在総務として働いている方や、これから総務を目指す方の中には、このような疑問を持つ方もいると思います。

総務主任。

総務課長。

管理部長。

人事や労務の専門職。

情シス。

経営企画。

総務の経験を活かして進める道は、一つではありません。

私はこれまで4社を経験し、接客・店舗管理から始まり、経理、総務、採用、広報、情シス、システム導入、経営支援まで、少しずつ仕事の幅を広げてきました。

その経験から感じているのは、

総務のキャリアは、自分の人生の選択肢を増やす

ということです。

総務の具体的な業務範囲については、以下の記事で詳しく紹介しています。

総務の仕事内容とは?10年以上働いてわかった「本当の仕事」を現役総務が解説

今回は、総務歴10年以上・4社経験者の私が、総務のキャリアパス、管理職を目指すために必要な知識、AI時代に求められる総務について解説します。

私は最初から総務を目指していたわけではない

私のキャリアは、接客や店舗管理から始まりました。

会社ごとの経験をまとめると、次のようになります。

1社目:接客・店舗管理

最初の会社では、接客や店舗管理に関わる仕事を経験しました。

お客様への対応。

売上の管理。

スタッフとの連携。

店舗で発生するトラブルへの対応。

現在の総務業務とは違う仕事に見えるかもしれません。

しかし、人と関わる力や、その場の状況を見て判断する力は、その後の総務業務にも活きています。

総務は、書類だけを相手にする仕事ではありません。

社員、経営陣、取引先、業者など、立場の異なる多くの人と関わります。

接客や店舗管理で経験した対人対応は、総務として働くうえで大きな土台になりました。

2社目:経理業務・総務補助・IT補助

2社目では、経理業務を中心に、総務やITの補助も経験しました。

この会社で出会った上司が、私の人生の目標となる総務経理部長です。

その方は、経理だけでなく、総務に関するさまざまな相談にも対応していました。

問題が起きても感情的にならず、状況を整理する。

必要な情報を集める。

会社にとって何が適切なのかを考える。

そして、決断力を持って判断する。

その姿を見て、

「自分も、いつかこのような総務経理部長になりたい」

と思うようになりました。

当時の私は、経理のオペレーションを理解し始めていました。

そこで、

「経理に加えて総務もできるようになれば、総務経理部長を目指せるのではないか」

と考えたのです。

つまり、私は最初から総務を目指していたわけではありません。

尊敬できる上司との出会いによって、初めて自分が目指したい将来像が見えてきました。

3社目:総務・IT・経理・広報・採用

3社目では、総務を中心に、IT、経理、広報、採用など、幅広い業務を担当しました。

中小企業では、

「これはどの部署が担当するのか」

と決まっていない仕事が発生することがあります。

そのような仕事は、総務へ集まりがちです。

私も、最初からすべての業務ができたわけではありません。

分からないことを調べる。

関係者へ確認する。

必要であれば業者へ相談する。

実際にやってみる。

失敗したら原因を調べる。

この繰り返しで、少しずつ担当できる範囲が広がっていきました。

4社目:システム開発・情シス

4社目では、システム開発や情シスの経験を深めています。

総務として現場の困りごとを把握し、ITを使って業務を改善する。

これまで別々に経験してきた総務とITの仕事が、少しずつ一つにつながってきました。

総務と情シスを兼任する仕事内容や、実際に感じたメリット・限界については、以下の記事で詳しく解説しています。

総務と情シスを兼任するとどうなる?一人情シスの仕事内容・メリット・限界を実体験で解説

総務のキャリアパスは一つではない

総務として働き始めたからといって、その後も同じ仕事だけを続けるわけではありません。

総務は業務範囲が広いため、仕事を通じて複数の専門分野を経験できます。

たとえば、次のようなキャリアが考えられます。

  • 総務主任・係長
  • 総務課長
  • 総務部長・管理部長
  • 総務経理部長
  • 人事・採用
  • 労務
  • 法務
  • 情報システム
  • 広報
  • 経営企画
  • 業務改善・DX推進

私自身が目指しているのは、経営企画や総務経理部長に近い役割です。

単に総務業務を処理するだけではなく、会社全体を見ながら、

  • 会社にどのような問題があるのか
  • どこを改善すべきなのか
  • どこへ予算を使うべきなのか
  • どのような人材を採用すべきなのか
  • 会社をどうすれば長く存続させられるのか

を考えられる立場を目指しています。

総務の経験は、現在の会社だけで使えるものではありません。

経理、採用、IT、広報、経営支援など、隣接する仕事へ広げることで、自分のキャリアの選択肢も増えていきます。

最初は浅く広く、その後に得意分野を深める

総務としてキャリアを築くなら、最初から一つの分野だけに絞るよりも、まずは浅く広く経験することをおすすめします。

総務の仕事は、それぞれが独立しているように見えて、実際にはつながっています。

社員を採用すれば、入社手続きが必要です。

パソコンやアカウントも準備します。

給与や勤怠には、労働法や社会保険の知識が関係します。

設備を導入するときには、予算や契約の確認が必要です。

システムを導入するときには、現場の業務と経営側の事情を理解しなければなりません。

幅広い業務を経験することで、会社全体の流れが見えるようになります。

そのうえで、

  • 採用が得意
  • 労務が得意
  • ITが得意
  • 数字に強い
  • 業務改善が得意
  • 経営陣への提案が得意

といった、自分の得意分野を深めていく方法が現実的です。

私の場合は、採用、情シス・IT、広報、経理、システム導入、経営支援が強みになりました。

最初から専門分野を決められなくても問題ありません。

さまざまな仕事を経験する中で、

「この仕事は得意かもしれない」

「もっと深く学びたい」

と思える分野が見つかることがあります。

キャリアアップの原点は「会社を長く存続させること」

私が業務改善や採用に積極的に取り組んだ原点は、

この会社を1年でも長く存続させること

です。

会社が存続すれば、社員の雇用や生活の安定を守れます。

一方で、今までと同じ仕事を、同じ方法で続けているだけでは、環境の変化についていけません。

働き方改革も進み、長時間働くことで成果を出す方法には限界があります。

これから必要なのは、同じ時間、あるいは今までより短い時間で、同等以上の成果を出せる仕組みです。

そのため、私は業務改善を積極的に提案し、実行してきました。

紙で管理していた仕事をシステムへ移す。

同じ情報を何度も入力していた作業を減らす。

担当者しか分からない仕事を見える化する。

社員が迷わず使える仕組みを考える。

改善案を出すだけではなく、実際に導入し、運用するところまで進めました。

総務のキャリアアップは、肩書きが変わることだけではありません。

会社の課題に気付き、自分で考え、実行できる範囲が広がることも大きな成長です。

新卒採用も会社を存続させるための取り組み

会社を長く存続させるためには、人材の新陳代謝も必要です。

社員の平均年齢が上がり続ければ、将来的に技術や仕事を引き継ぐ人が不足します。

そこで、私は新卒採用の開始にも関わりました。

毎年2〜3名の採用を継続すれば、10年間で20〜30名の若い人材を迎える機会になります。

もちろん、採用した全員が長く在籍するとは限りません。

それでも、継続的に若い人材を採用し、育成することは、会社の将来を考えるうえで重要です。

総務や採用の仕事は、現在の人手不足を埋めるだけではありません。

5年後、10年後の組織をつくる仕事でもあります。

目の前の業務だけではなく、将来の会社に必要なことを考える。

これも、総務が経営に近づくために必要な視点だと思います。

総務経験者の評価は「何年働いたか」だけでは決まらない

採用担当として総務経験者を見る場合、私は経験年数だけで判断しません。

重要なのは、

  • 何を考えたのか
  • どのような課題を見つけたのか
  • どのような手段を選んだのか
  • 実際に何を行ったのか
  • 結果から何を学んだのか

です。

頭の中で難しいことを考えられても、手が動かず、何も実行されなければ結果は残りません。

一方で、深く考えず、思いつきで次々と行動するのも危険です。

採用担当として確認したいのは、答えだけではありません。

数学にたとえるなら、問題文と途中の計算式を見るイメージです。

最終的な結果が成功だったか、失敗だったかだけで判断するわけではありません。

どのような状況で、何を考え、なぜその手段を選んだのか。

結果が思うように出なかったとき、何を振り返ったのか。

その過程を説明できる人は、別の会社でも考えながら行動できる可能性があります。

総務に向いている人の考え方や特徴については、以下の記事でも紹介しています。

総務に向いている人・向いていない人の特徴を総務歴10年以上が実体験から解説

管理職を目指すなら会社の数字を理解する

総務課長や管理部長、総務経理部長を目指すのであれば、担当業務の知識だけでは足りません。

必要になるのは、次のような能力です。

  • 経営数字を読む力
  • 予算管理
  • 部下の育成
  • 経営陣への提案
  • 他部署との調整
  • リスク管理

特に重要なのが、会社の数字を理解する力です。

管理職になれば、

  • 売上
  • 粗利益
  • 営業利益
  • 経常利益
  • 人件費
  • 設備投資
  • 部門予算

などの数字を見ながら判断する必要があります。

数字を理解していない状態で予算を使えば、会社の経営状況に合わない判断をする可能性があります。

会社にとって必要な設備でも、購入する時期が適切とは限りません。

便利なシステムでも、費用に見合う効果がなければ導入できません。

限られた予算をどこへ使うか判断するためには、会社の経営状況を読む力が必要です。

私は、すべての入口は簿記だと考えています。

簿記を学ぶことで、会社のお金がどのように動き、決算書がどのようにつくられるのかを理解できます。

営業利益や経常利益など、財務諸表を分析する知識は、ビジネス会計検定でも学べます。

総務に役立つ資格や、資格以上に重要な能力については、以下の記事で詳しく解説しています。

総務に資格は必要?実務・転職で役立つ資格を総務歴10年以上が本音で解説

AIやRPAで総務の仕事はなくなるのか

今後、総務の事務作業は確実に変わっていくと思います。

データ入力。

定型的なチェック。

決められた条件での振り分け。

同じ内容の繰り返し処理。

このような仕事は、AIやRPAと相性のよい分野です。

人間には体調や気分の変化があります。

一方、決められたルールに沿って正確に繰り返す作業は、AIやシステムが得意です。

そのため、これまで人間が行っていた単純な事務作業は減っていくと考えています。

ただし、総務そのものが不要になるわけではありません。

AIやシステムを導入するためには、

  • 何を自動化するのか
  • 現在の仕事にどのような問題があるのか
  • どの手順を変えるのか
  • 社員が使える仕組みになっているか
  • 誤った処理が行われていないか

を人間が判断する必要があります。

これから価値が高まるのは、事務作業を繰り返す人ではなく、AIやシステムを使って仕事を設計できる人だと思います。

AI時代に求められる総務

これからの総務には、すべての作業を自分で抱えるのではなく、

  • AIに任せる仕事
  • システムで自動化する仕事
  • 外部へ委託する仕事
  • 人間が判断する仕事

を分ける力が必要です。

一方で、社員の気持ちや職場の空気は、数字だけでは判断できません。

体調が悪そうな社員に気付く。

部署間の関係が悪くなっていることを察する。

制度上は正しくても、現場では運用しにくいことに気付く。

経営陣と社員の間で意見を調整する。

状況に応じて、原則とは違う対応が必要かを判断する。

こうした仕事は、今後も人間が担う重要な役割です。

総務の仕事には、必ずしも一つの正解があるわけではありません。

会社の状況。

社員の事情。

費用。

期限。

リスク。

さまざまな条件を踏まえて、ケースバイケースで判断する必要があります。

AIを恐れるのではなく、AIを使って単純作業を減らし、人間にしかできない判断や提案へ時間を使う。

それが、これからの総務に必要な働き方だと思います。

総務のキャリアを広げるために必要なこと

総務のキャリアは、会社から仕事を与えられるのを待っているだけでは広がりにくいと思います。

日々の仕事の中で、

「なぜこの作業を行っているのか」

「本当にこの方法でなければならないのか」

「もっと効率的な方法はないのか」

「会社にとって今後必要になるものは何か」

を考える必要があります。

そして、課題に気付いたら提案する。

小さく試す。

結果を確認する。

必要に応じて改善する。

この繰り返しが、経験になります。

重要なのは、与えられた作業を終わらせることだけではありません。

その仕事の目的や本質を考えることです。

なぜこの制度があるのか。

なぜこの情報を管理しているのか。

誰のための作業なのか。

会社にとってどのような意味があるのか。

本質を理解できれば、状況が変わっても、自分で考えて判断しやすくなります。

総務の一日は突発対応も多く、予定どおりに進まないことがあります。

そのような日常の中で、どのように優先順位を決めているかは、以下の記事で紹介しています。

総務の1日の流れとは?仕事内容・繁忙期・突発対応を総務歴10年以上が解説

まとめ

総務のキャリアは、一つではありません。

総務課長や管理部長を目指す道もあります。

人事、労務、法務、情シス、広報、経営企画など、得意分野へ進む道もあります。

私は、最初から総務を目指していたわけではありません。

接客や店舗管理から始まり、経理、総務、IT、採用、広報、システム導入と、少しずつ経験を広げてきました。

その中で、自分が将来なりたい総務経理部長の姿を見つけました。

総務のキャリアは、自分の人生の選択肢を増やします。

ただ仕事をこなすだけではなく、仕事の本質を考え、ケースバイケースで冷静に判断することが重要です。

将来の選択肢を増やすためには、簿記やITのスキル・知識を身につける必要があります。

資格や肩書きだけではなく、

「会社のために何を考え、何を実行したのか」

を説明できる経験を積む。

会社の数字を理解する。

ITやAIを使って、仕事の仕組みを改善する。

社員や経営陣の意見を聞き、状況に応じて判断する。

こうした経験の積み重ねが、総務としてのキャリアだけでなく、自分自身の人生の選択肢も増やしてくれると考えています。