総務の業務改善は何から始める?成功・失敗事例と進め方を実体験で解説
「総務の仕事を効率化したいけれど、何から始めればよいのだろう」
「新しいシステムを導入すれば、業務改善になるのだろうか」
総務として働いていると、このように考える場面があります。
紙の申請書を電子化する。
Excelで管理していた情報をシステムへ移す。
同じ内容を何度も入力する作業を自動化する。
特定の社員しか分からない仕事をマニュアル化する。
これらは、いずれも業務改善の方法です。
しかし、新しいシステムを導入しただけで、業務改善が成功するわけではありません。
どれだけ便利な仕組みを作っても、社員が使わなければ意味がないからです。
私は総務として、Excelで行っていた売上・原価集計のシステム化や、kintoneを使った管理方法の統一などに取り組んできました。
一方で、システムを完成させたものの、社員に使ってもらえず、運用が止まった経験もあります。
総務の仕事内容は、日常業務を処理することだけではありません。
会社の中にある非効率な仕事を見つけ、よりよい方法へ変えていくことも、総務の重要な役割です。
総務の業務範囲については、以下の記事で詳しく紹介しています。
総務の仕事内容とは?10年以上働いてわかった「本当の仕事」を現役総務が解説
今回は、総務歴10年以上の私が、実際に取り組んだ業務改善の成功事例と失敗事例をもとに、業務改善を何から始めるべきか解説します。
総務の業務改善は現場の問題から始まる
私が業務改善へ積極的に取り組むようになった理由は、一つではありません。
- 特定の社員だけ残業が多かった
- 紙の書類や二重入力が多かった
- 特定の社員しか分からない仕事があった
- 社員から不満が出ていた
- 会社を1年でも長く存続させたかった
特に気になったのが、同じような業務を担当しているにもかかわらず、部署によって残業時間に差があったことです。
たとえば、A課長が求める売上集計と、B課長が求める売上集計では、集計する範囲や細かさが異なっていました。
その結果、それぞれの部署で集計を担当する事務員の作業時間にも差が生まれていました。
残業が多い社員に対して、
「仕事が遅い」
「もっと効率よく作業してほしい」
と言うだけでは、問題は解決しません。
確認すべきなのは、本人の能力だけではなく、仕事の仕組みです。
- 求められている集計内容が違う
- 部署ごとに書式が違う
- 入力する項目が多い
- 同じ情報を何度も転記している
- 作業を担当者の判断に任せている
このような違いがあれば、同じ売上集計でも必要な時間は変わります。
社員の残業時間を見るときは、本人の働き方だけではなく、業務範囲や集計方法まで確認する必要があります。
「忙しい人」ではなく「仕事の仕組み」を見る
総務の業務改善で重要なのは、特定の社員だけを問題にしないことです。
残業が多い。
ミスが多い。
処理が遅い。
このような状況があった場合、担当者へ注意する前に、次の点を確認します。
- 作業手順が統一されているか
- 必要以上に細かい資料を作っていないか
- 同じ情報を何度も入力していないか
- 一人の経験や記憶に依存していないか
- 上司によって求める内容が変わっていないか
仕事のやり方が部署ごとに異なれば、作業時間や結果にも差が出ます。
その状態で社員個人の能力だけを比較しても、正しい評価にはなりません。
総務は、社内のさまざまな部署と関わる立場です。
だからこそ、個人の問題として片付けるのではなく、会社全体の仕組みとして問題を捉える必要があります。
Excel管理をkintoneへ移行した
私が実際に行った業務改善の一つが、Excelで管理していた情報のシステム化です。
社内でヒアリングを行うと、部署ごとに集計方法や書式が異なっていることが分かりました。
同じ売上を集計しているはずなのに、
- 入力項目が違う
- 集計範囲が違う
- 書式が違う
- ファイルの保存場所が違う
- 作成する人によって結果が変わる
という状態でした。
そこで、各部署へヒアリングを行い、統一書式を作成しました。
社長の判断と承認も得たうえで、
今後は、すべての部署が同じ書式と基準で集計する
というルールに変更しました。
さらに、集計したデータをシステムから出力できるようにしました。
これにより、担当者が毎回Excelを加工しなくても、必要な売上分析を出せるようになりました。
誰が操作しても、同じ条件で同じ結果が表示されます。
担当者による集計方法の違いを減らし、会社全体で共通の数字を確認できる仕組みに変えました。
30億円以上の売上と原価をExcelで集計していた
最も効果が大きかった業務改善は、売上と原価の管理方法を変えたことです。
改善前
30億円を超える売上と、その原価計算をExcelで集計していました。
事務課長が中心となり、複数の資料やデータを確認しながら、売上と原価をまとめていました。
問題点
大きな問題は、残業と属人化です。
集計方法や計算の仕組みを、特定の事務課長が把握していました。
その人がいなければ、正確な集計方法が分からない。
作業が集中するため、残業が増える。
数字がまとまるまでに時間がかかる。
原価や利益の状況を早い段階で確認できない。
会社にとって重要な数字が、一人の社員の経験と作業量に依存している状態でした。
行ったこと
そこで、原価管理システムを構築しました。
主な改善点は、次のとおりです。
- 売上と原価の集計基準を統一した
- 担当者しか分からなかった計算方法を整理した
- 作業を複数の社員へ分担できるようにした
- 集計結果をワンクリックで出力できるようにした
- 誰が操作しても同じ数字が表示されるようにした
Excelを完全に否定したわけではありません。
Excelで行っていた計算や確認の内容を整理し、繰り返し行う部分をシステムへ移しました。
改善後
正しい原価を、以前より早い段階で確認できるようになりました。
原価が想定より高い案件。
利益が十分に残っていない案件。
売上は大きいものの、利益率が低い案件。
こうした情報を早く確認できれば、経営判断も早くなります。
問題が大きくなってから気付くのではなく、途中で状況を確認し、必要な対応を取れるようになりました。
結果として、原価を適切に管理し、利益を残しやすい仕組みに変えることができました。
業務改善する仕事を見つける4つの基準
すべての仕事をシステム化する必要はありません。
改善には、時間も費用もかかります。
そのため、私は次のような仕事を優先して見直します。
同じ情報を何度も入力している
一度入力した情報を、別のExcelやシステムへ何度も転記している場合は、改善できる可能性があります。
二重入力には時間がかかります。
入力する回数が増えれば、転記ミスも起こりやすくなります。
どこか一つへ入力すれば、必要な場所へデータが反映される仕組みを作れないか検討します。
特定の人しかできない
担当者が休むと仕事が止まる。
退職すると手順が分からなくなる。
本人しかファイルの保存場所を知らない。
このような仕事は、属人化しています。
すぐにシステム化できなくても、
- 作業手順を整理する
- 保存場所を統一する
- マニュアルを作成する
- 複数の担当者で仕事を分担する
だけでも、リスクを減らせます。
社員から同じ質問を受ける
何度も同じ質問を受ける場合、質問する社員だけに問題があるとは限りません。
手順が分かりにくい。
社内ルールが周知されていない。
必要な情報が見つけにくい。
申請方法が複雑になっている。
このような可能性があります。
質問へ一件ずつ回答するだけではなく、なぜ同じ質問が繰り返されるのかを考えることが重要です。
作業時間に対して価値が低い
長い時間をかけて資料を作っているにもかかわらず、ほとんど使われていない場合があります。
誰が見るのか。
何の判断に使うのか。
どの項目が本当に必要なのか。
これらを確認し、不要な集計や資料作成を減らします。
総務の一日は、社員対応やトラブル対応によって予定どおりに進まないことも多くあります。
限られた時間をどのように使っているかについては、以下の記事で紹介しています。
総務の1日の流れとは?仕事内容・繁忙期・突発対応を総務歴10年以上が解説
システムを作っても業務改善は成功しない
私は、すべての業務改善に成功したわけではありません。
うまく進まなかった代表的な事例が、営業案件の管理システムです。
営業担当者の行動や、案件の進捗を一括管理できる仕組みを会社へ提案しました。
システム上では、
- 誰がどの顧客を担当しているか
- 案件がどこまで進んでいるか
- 次に何をするのか
- 受注の見込みはどの程度か
を確認できるようにしました。
仕組みそのものは作ることができました。
しかし、社員に使ってもらえませんでした。
現場からは、
「システムへ入力する時間がもったいない」
「忙しいから入力したくない」
「自分で管理したい」
といった意見が出ました。
さらに、マネージャーも部下の行動や案件を十分に管理できていませんでした。
システムは完成している。
しかし、入力する社員がいない。
管理する上司も活用しない。
結果として、案件管理の仕組みは空中分解しました。
失敗の原因はシステムではなく運用だった
案件管理がうまくいかなかった原因は、システムの機能不足だけではありません。
大きな原因は、運用する人を巻き込めていなかったことです。
システムを作る側から見れば、
「入力すれば、案件の状況が分かる」
「営業活動を管理しやすくなる」
「失注の原因を分析できる」
というメリットがあります。
しかし、営業担当者から見れば、仕事が一つ増えたように感じます。
これまで自分の手帳や記憶で管理していた人にとっては、新しいシステムへの入力が負担になります。
入力した情報が何に使われるのか分からなければ、協力する理由もありません。
業務改善では、正しい仕組みを作るだけでは足りません。
- なぜ入力するのか
- 入力した情報を誰が見るのか
- 現場にどのようなメリットがあるのか
- 入力項目を減らせないか
- 上司が本当に活用するのか
を、導入前に確認する必要があります。
現場のニーズを確認してから始める
業務改善を始めるとき、最初に行うべきなのはシステム選びではありません。
まず、現場のニーズを確認します。
- 現在どのような作業をしているのか
- 何に時間がかかっているのか
- どのような不満があるのか
- どの作業を減らしたいのか
- 新しい仕組みに協力してもらえるか
実際に作業している人の話を聞かなければ、本当の問題は分かりません。
管理者から見ると非効率に見える仕事にも、現場なりの理由がある場合があります。
反対に、当たり前のように続けている作業が、すでに不要になっていることもあります。
最初から答えを決めてヒアリングするのではなく、現在の仕事と困りごとを確認することが重要です。
信頼できる課長以上の社員へ相談する
現場のニーズを確認した後は、信頼できる課長以上の社員へ相談します。
総務だけで業務改善を進めようとしても、他部署の社員へ強制することは難しいからです。
特に、複数の部署が関係する改善では、管理職の協力が欠かせません。
- 現場の課題を理解している
- 部下へ目的を説明できる
- 必要なルールを決められる
- 導入後も運用を確認できる
- 問題が起きたときに判断できる
このような人に参加してもらい、チームを作ります。
総務がシステムを作る。
現場が試す。
管理職がルールを決める。
経営陣が必要な判断をする。
それぞれの役割を分けることで、総務一人に負担が集中することを防げます。
いきなり全社導入せずスモールスタートする
新しい仕組みは、最初から全社へ導入しない方が安全です。
まずは、一つの部署や少人数のチームで試します。
テスト運用では、次の点を確認します。
- 入力項目が多すぎないか
- 操作方法が分かりにくくないか
- 現場の負担が増えていないか
- 必要な情報を取得できるか
- 想定していない使い方がないか
- 導入目的を達成できているか
小さく始めれば、失敗したときの影響も小さくできます。
現場から意見をもらい、修正してから対象部署を広げます。
最初から完璧な仕組みを作ろうとすると、時間も費用もかかります。
実際に使ってもらわなければ分からない問題もあります。
そのため、まず動かす。
使ってもらう。
意見を聞く。
修正する。
この流れが重要です。
費用対効果だけでなく現場の負担も確認する
経営陣へ業務改善を提案するときは、費用対効果を説明します。
- 導入費用はいくらか
- 毎月いくらかかるのか
- 何時間の作業を減らせるのか
- 残業代をどの程度削減できるのか
- ミスや損失をどの程度防げるのか
- 何年で費用を回収できるのか
ただし、金額だけで判断するのも危険です。
システム導入によって、現場の作業が増えることもあります。
管理者には便利でも、入力する社員の負担が大きければ定着しません。
業務改善では、
- 会社にとってのメリット
- 管理者にとってのメリット
- 現場社員にとってのメリット
を分けて考える必要があります。
誰か一人だけが便利になる仕組みではなく、全体として負担を減らせる方法を探します。
社内周知と教育までが業務改善
システムを導入し、説明会を一度開催しただけでは、社員が使えるようになるとは限りません。
新しい仕組みを定着させるためには、
- 導入目的を説明する
- 操作方法を伝える
- マニュアルを用意する
- 質問できる窓口を作る
- 利用状況を確認する
- 使われない理由を調べる
必要があります。
使わない社員を責めるだけでは、定着しません。
操作が難しいのか。
入力項目が多いのか。
必要性が伝わっていないのか。
管理職が使っていないのか。
原因を確認し、仕組みや説明方法を修正します。
総務と情シスを兼任すると、システム導入から社員への説明、運用後の問い合わせまで担当することがあります。
総務とITを兼任する仕事については、以下の記事で詳しく解説しています。
総務と情シスを兼任するとどうなる?一人情シスの仕事内容・メリット・限界を実体験で解説
AIやRPAに任せやすい総務業務
今後は、AIやRPAを活用することで、総務の定型業務をさらに減らせると考えています。
特に任せやすいのは、次のような仕事です。
- データ入力
- 定型的な集計
- 複数データの照合
- 決められた条件での分類
- 定期的なレポート作成
- 大量データの分析
- 同じ内容の繰り返し処理
人間が毎月同じ手順で行っている仕事は、自動化できる可能性があります。
一方で、AIやRPAへ任せた後も、正しく動いているか確認する人は必要です。
データの取得先が変わる。
入力する書式が変わる。
社内ルールが変更される。
例外的な処理が発生する。
このような変化があれば、仕組みを修正しなければなりません。
これからは、事務作業を繰り返す人だけではなく、AIや自動化の仕組みを管理し、メンテナンスできる人材が重宝されると思います。
人間が行うべきなのは経営判断
集計や入力をAIに任せることができても、最終的な経営判断まで、すべて任せられるわけではありません。
たとえば、原価管理システムによって、
「この案件は利益率が低い」
と確認できたとしても、その案件を続けるかどうかは別の問題です。
将来の取引につながる可能性がある。
重要な顧客との関係を守る必要がある。
社員の育成目的で受注している。
一時的に原材料費が高騰している。
数字だけでは判断できない事情もあります。
AIやシステムは、判断に必要な情報を早く、正確に出すために使います。
その情報をもとに、会社の状況や将来への影響を考えて決断するのは、人間の役割です。
総務のキャリアにおいても、単純作業だけでなく、会社の課題を見つけて判断する力が重要になります。
総務のキャリアパスや、今後必要になる簿記・ITの知識については、以下の記事で紹介しています。
総務のキャリアパスは?総務歴10年以上・4社経験者が将来性と成長方法を解説
まとめ
総務の業務改善は、現場のニーズを聞くことから始めるべきです。
新しいシステムを導入する前に、
- 現在どのような仕事をしているのか
- 何に時間がかかっているのか
- 誰に負担が集中しているのか
- どのような不満があるのか
- 本当に改善へ協力してもらえるのか
を確認します。
私は、Excelで管理していた売上と原価の集計をシステム化し、誰が操作しても同じ結果を出せる仕組みを作りました。
一方で、営業案件の管理システムを作ったものの、現場や管理職に使ってもらえず、運用が止まった経験もあります。
この二つの違いは、システムの機能だけではありません。
使ってくれる社員がいるか。
協力してくれる管理職がいるか。
導入目的が共有されているか。
運用するチームが作られているか。
こうした点が、業務改善の結果を左右します。
システムを導入することが目的ではありません。
社員が実際に使い、仕事の負担やミスを減らすことが目的です。
改善を成功させるためには、信頼できるメンバーでチームを作り、スモールスタートする必要があります。
小さく始める。
使ってもらう。
意見を聞く。
修正する。
少しずつ対象を広げる。
総務の業務改善は、この繰り返しによって会社へ定着していくと考えています。

