「総務に転職したいのですが、資格は必要ですか?」

採用担当をしていると、このような質問を受けることがあります。

総務は業務範囲が広い仕事です。

労務。

経理。

法務。

IT。

防災。

採用。

会社によっては、これらの業務を総務がまとめて担当していることもあります。

そのため、

「資格をたくさん持っていないと総務になれないのでは?」

と思う方もいるかもしれません。

しかし、総務歴10年以上、採用担当としても多くの応募者を見てきた私の結論は、次のとおりです。

資格がなくても総務にはなれます。
ただし、担当業務に必要な知識を学び続ける姿勢は必要です。

資格を持っているだけで、総務の仕事ができるわけではありません。

一方で、資格の勉強を通して身につけた知識が、仕事や転職で大きく役立つこともあります。

今回は、総務の実務や転職で役立つ資格について、総務歴10年以上の経験をもとに解説します。

総務が実際にどのような仕事を担当しているのかは、以下の記事で詳しく紹介しています。

総務の仕事内容とは?総務歴10年以上が実際の業務を解説

総務になるために資格は必須ではない

総務として働くために、絶対に必要な資格があるわけではありません。

私自身、総務の採用で資格だけを見て判断することはありません。

それよりも確認したいのは、

  • なぜ総務をやりたいのか
  • 総務をどのような仕事だと思っているのか
  • どのような働き方をしたいのか

という部分です。

総務は、毎日決まった事務処理だけを行う仕事ではありません。

社員から突然相談を受けることもあります。

設備が故障することもあります。

社内制度を変えることもあります。

経営陣から、会社全体に関わる意見を求められることもあります。

資格を持っていることは評価材料になりますが、それだけで採用が決まるわけではありません。

資格を持っている人を評価する理由

資格が必須ではなくても、採用時に評価することはあります。

特に、衛生管理者や防火管理者など、企業によって選任が必要になる資格を持っている場合です。

会社として必要な資格をすでに持っていれば、入社後すぐに役割を任せられる可能性があります。

また、資格を取得したという事実から、

  • 業務に必要な知識を学ぼうとした
  • 自分で目標を決めて勉強した
  • 継続して取り組んだ

という姿勢も確認できます。

ただし、資格を取得しただけで満足し、仕事で活用しようとしなければ意味はありません。

資格は、取得することが目的ではなく、仕事に活かすための手段です。

未経験から総務を目指す場合、資格以外にどのような点を採用担当が見ているのかは、以下の記事で詳しく解説しています。

未経験から総務に転職する方法|採用担当が見るポイント

総務未経験者におすすめするなら日商簿記

未経験から総務を目指す方に、最初の一つとしておすすめするなら、私は日商簿記を挙げます。

総務は、経理や人事と連携する場面が多い仕事です。

予算を確認する。

請求書を処理する。

経費を管理する。

給与や社会保険に関する数字を見る。

設備や備品の購入について、費用対効果を考える。

総務自身が経理業務を担当していなくても、数字や会計の知識が求められる場面は多くあります。

簿記を勉強すると、会社のお金がどのように動いているのかを理解しやすくなります。

仕訳を完璧に覚えることだけが目的ではありません。

会社の数字を読めるようになることが、総務の仕事に役立ちます。

現役総務にはITパスポートもおすすめ

すでに総務として働いている方には、ITパスポートもおすすめです。

ITパスポートという名前から、

「パソコンやネットワークだけを勉強する資格」

と思われることがあります。

しかし、実際の出題範囲には、ITだけではなく経営や業務改善に関する内容も含まれています。

現在の総務は、パソコンやシステムと切り離して仕事をすることが難しくなっています。

Microsoft 365。

勤怠管理システム。

人事管理システム。

クラウドサービス。

情報セキュリティ。

社内ネットワーク。

こうした仕組みに関わる機会は増えています。

総務がシステムの専門家になる必要はありません。

ただし、基本的な用語や仕組みを理解していれば、業者や社内の情シス担当者とも話がしやすくなります。

ITパスポートは、総務だけではなく、ビジネスパーソンとして必要な基礎知識を広く学べる資格だと考えています。

管理職を目指すなら、会計と経営の知識が必要

総務課長や管理部長など、管理職を目指すのであれば、簿記に加えてFPやビジネス会計検定の知識も役立ちます。

管理職になると、自分の担当業務だけを処理すればよいわけではありません。

部門の予算。

人件費。

設備投資。

業務委託費。

会社の利益。

経営計画。

さまざまな数字を見ながら判断する必要があります。

私はFP2級を取得しています。

FPの知識が総務の通常業務で直接活躍する場面は、それほど多くありません。

それでも、社会保険、税金、年金、保険など、社員の生活に関わる制度を理解するうえでは役立ちます。

また、管理職や経営に近い立場を目指すのであれば、会社の数字を理解する力は欠かせません。

総務に役立つ資格を実務目線で評価

私が総務の実務を基準に評価すると、次のようになります。

S:総務の仕事にかなり役立つ

日商簿記

総務は経理、人事、経営陣と連携する機会が多いため、数字と会計の知識が役立ちます。

特に、予算管理や経費管理、設備投資を考える場面では、簿記の知識があると話を理解しやすくなります。

社会保険労務士

労働法、社会保険、就業規則、労務管理など、総務や人事と関係の深い知識を体系的に学べます。

難易度は高いですが、労務を深く担当する場合には非常に価値のある資格です。

中小企業診断士

会社全体を見て、経営や業務改善を考える力を身につけられます。

総務として経営陣に近い仕事をしたい方や、管理職を目指す方に向いています。

A:担当業務によって役立つ

衛生管理者

企業によっては選任が必要になります。

安全衛生委員会、健康診断、職場環境の改善などを担当する場合に役立ちます。

防火管理者

消防計画や防災訓練、建物の安全管理を担当する場合に必要になることがあります。

総務が防災を担当している会社では、取得を求められる可能性があります。

ITパスポート

IT、情報セキュリティ、ネットワークだけでなく、経営や業務改善に関する基礎知識も学べます。

総務と情シスを兼任している方にもおすすめです。

FP

総務の仕事に直接使う場面は限られますが、社会保険、税金、年金などの理解に役立ちます。

社員から制度について相談を受ける機会がある方には有効です。

B:知識は役立つが、資格取得の優先度は高くない

個人情報保護士

総務は社員情報、給与情報、採用情報など、多くの個人情報を扱います。

知識は重要ですが、一般的な総務では、資格取得そのものより社内ルールを理解し、適切に運用することが重要です。

C:一般的な総務では優先度が低い

MOS

WordやExcelを使う能力は必要です。

ただし、資格を持っていることよりも、実務でどの程度使えるかの方が重要です。

私は、Excelなどの実務能力を学ぶのであれば、日商PC検定のデータ活用も選択肢になると考えています。

ビジネス実務法務検定

契約や法務の知識は総務に役立ちます。

一方で、すべての総務担当者が法務を担当するわけではないため、担当業務によって優先度が変わります。

メンタルヘルス・マネジメント検定

社員の健康管理や休職対応を担当する場合には知識が役立ちます。

ただし、一般的な総務未経験者が最初に取得する資格としては、優先度は低いと考えています。

資格を取ることで仕事の幅が広がることはある

資格を取得すると、知識が増えるだけではありません。

私自身の経験では、資格や学習を続けることで、

  • 新しい仕事を任される
  • 社内で説明しやすくなる
  • 転職で評価される
  • 給与や手当につながる
  • 自信がつく
  • 社員から頼られる
  • 経営陣から意見を求められる

といった変化がありました。

知識が増えることで、これまで分からなかった会議の内容が理解できるようになります。

業者から提案を受けたときにも、言われたことをそのまま受け入れるのではなく、

「本当に会社に必要なのか」

「費用に見合う効果があるのか」

と考えられるようになります。

資格取得の本当の価値は、肩書きが増えることではなく、仕事で判断できる範囲が広がることだと思います。

資格の勉強は仕事をしながらでもできる

本業や家庭がある中で、まとまった勉強時間を確保するのは簡単ではありません。

私も、通勤中や仕事の合間を使って勉強してきました。

毎日何時間も勉強できなくても構いません。

通勤中にテキストを読む。

昼休みに問題を解く。

仕事で分からなかった内容を帰宅後に調べる。

こうした小さな積み重ねでも、知識は増えていきます。

仕事をしながら学ぶメリットは、勉強した内容をすぐに実務で確認できることです。

本に書かれていた制度が、実際の会社ではどのように運用されているのか。

理論と実務の違いを確認しながら学ぶことができます。

資格取得費用は自分への投資

資格取得費用を会社が負担してくれる場合もあります。

もちろん、会社が負担してくれるのであれば、ありがたいことです。

ただ、私は基本的に、

資格は自分の付加価値になるもの

と考えています。

会社を辞めても、取得した資格や身につけた知識は自分に残ります。

そのため、会社負担を前提にするのではなく、必要だと思えば自己負担でも受験します。

会社が費用を出してくれたら、ラッキー。

それくらいの考え方でよいと思っています。

資格よりも大切な3つの能力

総務として働くうえでは、資格よりも重要な能力があります。

分からないことを調べ、実行する行動力

総務には、前例のない仕事が突然発生します。

そのときに、

「分からないからできません」

で終わるのではなく、調べて、相談して、実行できることが重要です。

会社や社員に本当にメリットがあるか見抜く力

総務には、さまざまな業者から提案が届きます。

新しいシステム。

福利厚生サービス。

設備。

保険。

研修。

提案されたものを導入することが仕事ではありません。

会社や社員にとって、本当にメリットがある提案なのかを判断する必要があります。

仕事の本質を考える力

決められた作業を続けるだけでは、会社は良くなりません。

なぜこの作業をしているのか。

もっと効率的な方法はないのか。

社員が困っていることは何か。

総務の仕事は、会社をより働きやすくすることです。

仕事の目的を考え続けることが大切です。

資格以外に、総務で求められる考え方や適性については、以下の記事でも詳しく紹介しています。

総務に向いている人・向いていない人の特徴とは?

資格があることと、仕事ができることは別

資格は、体系的な知識を身につけるために役立ちます。

しかし、資格で学ぶのは、あくまで学問や制度上の知識です。

実際の仕事では、教科書どおりに進まないことがあります。

社員一人ひとりの事情が違う。

会社ごとにルールが違う。

経営状況によって、取れる選択肢も変わる。

正しい知識を持っていても、相手に伝えられなければ仕事は進みません。

提案しても、実行しなければ会社は変わりません。

だから私は、

資格がある人=総務の仕事ができる人

だとは考えていません。

資格がなくても、日頃から社員の困りごとに気付き、改善に向けて行動できる人はいます。

反対に、難しい資格を持っていても、知識を仕事に活かそうとしなければ価値は生まれません。

まとめ

総務になるために、資格は必須ではありません。

未経験から総務を目指すのであれば、まずは日商簿記がおすすめです。

現役総務として仕事の幅を広げたいのであれば、ITパスポートや衛生管理者、防火管理者なども役立ちます。

管理職や経営に近い立場を目指すのであれば、簿記、FP、ビジネス会計、経営に関する知識が必要になります。

ただし、最も大切なのは資格の数ではありません。

担当業務に必要な知識を学び続けること。

分からないことを調べ、行動すること。

日頃の小さな問題に気付くこと。

そして、会社や社員にとって何が必要なのかを考えることです。

資格は、総務として成長するための手段の一つです。

資格を取ること自体を目的にするのではなく、学んだ知識を実務でどう活かすかまで考えてみてください。

総務への転職を考えている方へ

資格は、総務への転職で評価される材料の一つです。

ただし、採用担当が見ているのは資格だけではありません。

未経験から総務を目指す場合に、どのような準備をすればよいのかは、以下の記事で詳しく解説しています。

未経験から総務に転職する方法|採用担当が見るポイント